宮城県図書館だより「ことばのうみ」第29号 2008年12月発行 テキスト版
おもな記事。
表紙の写真。
今回の写真は、「歴代の図書館」です。5枚の写真が載っています。
1枚目は明治14年7月の「宮城書籍館」創設当時の写真です。
2枚目は大正元年10月新築当時の写真です。
3枚目は昭和24年11月に現在の宮城県庁西側に再建された図書館の写真です。
4枚目は昭和43年1月に現在の榴ヶ岡に新築された図書館の写真です。
5枚目は平成10年3月に現在の泉区紫山に新築された現在の図書館の写真です。
巻頭エッセイ 「森茉莉を愛する人々」 作家 木村紅美さん。
高校時代、図書委員をやっていた。そのときお世話になった司書の佐久間さんには、大きな影響を与えられた。中でも森茉莉を教えられたのは忘れられない。
「森鴎外の娘の森茉莉って作家、紅美さんが絶対好きだと思うのよ。いま読んでも、すっごく新しくてかっこいいんだから」
私はたちまち、その妖しく美しい文章世界のトリコになった。
上京して15年近く経つ。いま私が住んでいる駅から電車で十数分の下北沢という町には、森茉莉が生前、よく原稿を書いていた喫茶店がある。初めて小説の新人賞の最終選考に残ったとき、私は願掛けを兼ねて珈琲を飲みに行った。主人に事情を伝えたところ、私の手を握り、こう言われたのが忘れられない。
「茉莉さんがね、きっと見守っていてくださるから、大丈夫ですよ」
ひと月後、受賞が決まった。森茉莉を、私はずっと読み返し続けるだろう。
著者のご紹介。
きむら・くみ:作家。1976年生まれ。宮城県仙台向山高等学校、明治学院大学文学部芸術学科卒業。2006年、『風化する女』で第102回文學界新人賞受賞。著書に『風化する女』『島の夜』『イギリス海岸 イーハトーヴ短篇集』『花束』。2008年、『月食の日』(文學界5月号)で第139回芥川賞候補。現在、東京在住。実家は岩手県盛岡市。
特集 図書館から情報発信! 叡智の杜レポート拡大版。
この秋、宮城県図書館では、より多くの方に図書館に足を運んでいただけるように、大きな催しを2つ開催しました。ひとつは、東北大学附属図書館との合同企画展「関孝和没後300年記念 はっぴぃ さんぽう -和算の世界へようこそ!-」、もうひとつは「みやぎ県民大学開放講座『叡智の杜を訪ねて』」です。今回は、図書館資料を活用した情報発信の取組みを紹介します。
「関孝和没後300年記念 はっぴぃ さんぽう ―和算の世界へようこそ!―」を開催しました。
日本生まれの数学「和算」を知る企画展。
平成20年10月25日(土曜日)から11月24日(月曜日)までの1か月間、本館展示室を会場として、東北大学附属図書館との合同企画展を開催しました。本館には、仙台藩ゆかりの和算家・戸板保佑(1708~1784)が編纂した『関算四伝書』をはじめ、多くの和算書が伝えられています。今回は、国内有数の自然科学系古典コレクションを有する東北大学附属図書館と合同で企画運営を行い、両館の所蔵資料から約90点の和算関係資料を展示しました。会期中には、延べ2,566人が来場しました。
また、この合同企画展を記念して、和算に親しむ講演会を開催しました。児童文学作家の遠藤寛子氏による「算法少女のなぞ」(10月25日講演)、東北大学名誉教授土倉保氏による「和算を楽しんだ江戸時代の人々」(11月8日講演)、宮城教育大学教授萬伸介氏による「いろいろな見方で楽しもう!和算の問題」(11月8日講演)には、延べ190人が参加しました。
数への関心と、和算の発展を支えた和算家たち。
和算は日本生まれの数学で、江戸時代に広く親しまれました。和算がそろばんや九九など暮らしの技術として、また遊びのひとつとして庶民化するきっかけとなったのが、『塵劫記』(吉田光由著)でした。
『塵劫記』は、庶民に親しまれた代表的な和算書です。中国などの算術書の影響を受けつつも、九九やそろばん、売買や計量・測量といった暮らしに必要な知識が丁寧にとりあげられている点に特徴があります。『塵劫記』の人気とともに、「~塵劫記」などと名を借りた海賊版も広く出版されました。海賊版の内容は原書の部分抜粋や引き写しが主で400種とも言われます。仙台においても、同種の類似本が刊行されています。
人々が数への関心を高めつつあった江戸時代の前期、関孝和(1640頃~1708)は、和算界にさっそうと登場します。関は従来の天元術(算木を使って解く方法)に代わる演段術(筆算で解く方法)を編み出したほか、数多くの重要な発見を行っています。
関孝和により体系化された和算は、江戸時代を通じて大きく花開きます。江戸や上方ではさまざまな流派の算家が技を競い合い、その成果ははるか遠く陸奥・仙台の地までもたらされました。仙台藩で天文学者として勤めた戸板保佑は、関流和算を学んだ和算家でもあり、関流和算家たちの著作や、戸板自身の著作などを収録した関流の集大成『関算四伝書』を編さんしています。また、各地を遊歴して算術指導などを行う「遊歴算家」と称される研究家も現れました。
展示会では、豊富な所蔵資料と解説パネルを用いて、和算の発展とそれを支えた和算家たちについて紹介しました。
こんな資料を展示しました。
『絵本工夫之錦』 前編2 後編1 3冊 船山輔之著 寛政10年(1798)刊
船山輔之(1738~1804)は仙台藩の天文方で、はじめは戸板保佑に学びました。本書は、算術の問題に関係する絵を描き、子どもの関心を誘うねらいをもって書かれました。
『早割算法日用記』 1冊 文化2 年(1805)刊
大小の数の呼び方や様々な物の単位、九九や割り算など日常用いられる算法について解説しています。 版元は伊勢屋半右衛門という、仙台の書肆(本の出版・販売をする店)です。
『関算四伝書』 511 冊( 存507冊、要伝80~83 欠)戸板保佑編 安永9年(1780)写
「関算前伝」「関算後伝」「関算要伝」「関算完伝」という4 つの区分からなり、総称して「関算四伝書」と呼ばれています。 現存する507冊が宮城県有形文化財(書跡・典籍)に指定されています。
みやぎ県民大学開放講座「叡智の杜を訪ねて」を開催しました。
「目で視るみやぎ ~ 県政ニュースを振り返る ~ 11月1日開催。
「宮城県政ニュース」は、1954年から1987年までに宮城県で製作された、16mmフィルムによる映像記録です。テレビが普及していない当時、県民が県のニュースを知る唯一の映像ツールでした。
当日は「国民温泉となる鳴子温泉郷 樹氷への招待」(1959)、「牡鹿コバルトライン」(1970)、「特報『津波宮城県を襲う』」(1960)の3本を上映して解説を加えました。また、映像などを後世に残すためのデジタル化(デジタルアーカイブ)についても紹介しました。
職員voice。
「宮城県政ニュース」は、元のフィルムからDVDなどへデジタル変換・保存しています。フィルムの長期保存による劣化と、フィルム再生機器の確保が困難であるためです。図書館では、これからも「利用のための資料保存」を目指していきます。
江戸城内の将軍家図書館 -紅葉山文庫と書物奉行- 11 月8 日開催。
江戸城内には「紅葉山文庫」という現在の図書館にあたるものがありました。11 代将軍徳川家斉の時代には約10万冊の蔵書があ ったといわれています。利用者が将軍や幕府の役人など極めて限定され、現在の図書館司書にあたる「書物奉行」という役人が厳重に 管理していたこともあって多くの貴重な資料が現在まで残されています。徳川吉宗の時代の利用資料の内容を分析し、書物奉行の果た した役割について解説しました。
職員voice。
書物奉行という図書館司書にあたる「人」を介在させることで紅葉山文庫の蔵書内容の水準が維持され、利用の活性化が図られま した。いつの時代でも図書館は「人」が手をかけることによって発展するものであるといえます。
折本づくりについて ~ 超かんたん きれいに仕上がる私だけのオリジナル折本~ 11 月15 日開催。
本には大きく分けて、日本に古くからある和装本と、明治時代に西洋から入ってきた洋装本とがあります。折本は和装本の一種で、横に長くつなぎ合わせた紙を一定の幅で折りたたんで作る書物で、手軽にいろいろな作品を作ることができます。年賀状ブックの作成や、撮りためた写真でのミニ写真集作りなどに応用できます。当日は参加者の方にご持参いただいたはがきや写真を使って、工夫を凝らした思い思いの折本づくりを体験いただきました。
職員voice。
本の歴史をひもとくと、江戸時代以前は折本などの和装本が中心だったことが分かります。本館では様々な形態の本を作る楽し み方について紹介した資料を所蔵しています。今回の講座をきっかけに、ぜひ本作りを体験いただきたいと思います。
宮城県図書館 貴重書の世界 -みやぎの『叡智』の源流を訪ねて- 11月22 日開催。
本館所蔵の特殊コレクションと貴重書の中から、国、県指定の文化財を中心に解説しました。17 世紀初頭に北京で刊行され た漢訳世界地図『坤輿万国全図』、江戸後期の博物誌『禽譜』『魚蟲譜』、日本人として初めて世界一周した仙台藩水夫の漂流記『環 海異聞』等を取り上げ、それぞれの成立、構成、特徴、学術専門調査の成果、資料にまつわるエピソード等を紹介しました。また、特 殊コレクションから「伊達文庫」「養賢堂文庫」「青柳文庫」を紹介しました。
職員voice。
今回の貴重書の多くが本館の長期プロジェクト「叡智の杜づくり事業」の中で価値が再発見され、新たに文化財として指定さ れました。「古きをたずねて新しきを知る」との言葉どおり、こうした資料が次の時代をつくる礎となることを願っています。
時代に睨まれた本たち -もう一つの貴重資料- 11月29 日開催。
江戸時代や戦前の日本において、出版物などを公権力が審査し、その内容が体制にそぐわなければ発売や発行を禁止(略称 「発禁」)する検閲制度がありました。これは、1949 年に日本国憲法によって表現の自由と検閲の禁止が定められるまで続きました。 当日は、江戸時代以降に出版された所蔵資料から、実際に発禁処分を受けた資料を紹介し、出版取締りに関する触書や法令などと照らして、それぞれの時代背景について理解を深めました。
職員voice。
私たちは今、好きな本を自由に手に取ることができます。過去の社会情勢の中、それが許されない事実があったことを忘れ てはいけないと感じました。江戸時代以降の本と時代との関わりを通して、図書館の新たな一面を知って頂けたと思います。
図書館 around the みやぎ シリーズ第24回 気仙沼市図書館館長 西城 重一。
気仙沼市図書館は、明治40年、市内の篤志家から寄贈された図書・雑誌をもとに、気仙沼小学校旧校舎に児童図書館を設置したのが始まりとなっています。大正5年に文部省より町立図書館として認可され(蔵書520冊)、大正15年に当時の気仙沼町長新沼綱五郎が気仙沼小学校敷地に独立図書館を建設し、町に寄付しました。
昭和22年に町民有志により「図書館維持後援会」を発足し(会員110人、会費20円)、図書館増築の寄付を募るなど、市民の図書館運営への積極的協力を得ました。昭和43年には市制10周年記念事業として新館を建設、現在に至っています。また、この年には宮城県図書館から図書を借りて、貸出文庫により館外奉仕を開始しました。昭和46年に仙台市図書館から移動図書館車を譲り受け、「おおぞら号」と命名、運行を始めました。現在は4台目の「おおぞら号」が運行しています。
旧唐桑町との合併により、平成18年7月には旧唐桑町公民館図書室を気仙沼市図書館唐桑分館として開館し、専任職員1名が担当しています。平成19年12月から長年の課題であったコンピューターによる蔵書管理システムが稼働し、1人当たりの利用可能冊数が4冊から10冊(その他にAV資料2点)と増え、また、検索機能が充実し、インターネットでの蔵書検索も可能となりました。利用者が自分で読みたい本を探しやすくなり、評判は上々です。リクエスト・予約冊数も大幅に増えています。
今後は「気仙沼市子ども読書活動推進計画」に基づき、学校や地域などとの連携をさらに強化し、子ども読書の推進に努め、また、より多くの市民の要望に応えての資料提供のみならず、市民生活に欠かせないさまざまな情報を提供する「生涯学習情報発信基地」を目指して参ります。
気仙沼市図書館のご紹介。
- 図書館のデータ。
- 蔵書冊数:195,026点。(平成19年度末)
- 貸出冊数:155,775点。(平成19年度実績)
- 開館時間:9時00分~17時00分(火曜日から日曜日)
- 休館日:毎週月曜日、祝日(祝日が月曜日のときはその翌日)、毎月第4木曜日(その日が休館日のときは
- その直前の開館日)、年末年始、特別整理期間。
- 交通:JR気仙沼駅から市役所経由で徒歩20分。
- 住所:郵便番号988-0073宮城県気仙沼市笹が陣3-30。
- 電話番号:0226-22-6778。ファクス番号:0226-22-0964。
図書館からのお知らせ。
宮城県図書館移転開館10周年記念特別展「叡智の杜から(第1回)― 仙台藩校・養賢堂の和算書と洋学書―」を開催中です
新館移転10周年を記念して、仙台藩の藩校「養賢堂」に由来する「養賢堂文庫」から、全国的にも評価の高い「和算書」と「洋学書」を展示し、本館の源流となり、明治以降も多彩な人材を輩出した養賢堂の学問について紹介します。
期間は平成20年12月6日(土曜日)から平成21年2月27日(金曜日)。
時間は図書館開館日の午前9時30分から午後5時00分まで。
場所は図書館2階展示室。入場料は無料です。
問い合わせは資料奉仕部調査班(3階)電話番号:022-377-8483。
特別整理期間のため休館します。
蔵書の所在や状態を点検するため、下記の期間は休館します。利用者の皆様にはご不便をおかけしますが、ご理解とご協力をお願い します。
特別整理期間は平成21年1月29日(木曜日)から平成21年2月11日(水曜日)まで
この「ことばのうみ」テキスト版は、音声読み上げに配慮して、内容の一部を修正しています。
特に、句読点は音声読み上げのときの区切りになるため、通常は不要な文末等にも付与しています。
「ことばのうみ」は、宮城県図書館で編集・発行しています。
宮城県図書館だより「ことばのうみ」 第29号 2008年12月発行。